尿失禁(尿もれ)
尿失禁(尿もれ)とは
尿失禁(尿もれ)は、自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまう状態であり、女性に非常に多く見られるトラブルです。QOL(生活の質)を大きく低下させ、外出や運動を控えてしまう原因になります。女性の尿もれは、主に原因が異なる2つのタイプ(腹圧性・切迫性)に大別され、これらが混ざり合った「混合性尿失禁」の方も多く存在します。
① 腹圧性尿失禁
せき、くしゃみ、笑う、走る、重い荷物を持ち上げるなど、お腹に力(腹圧)がかかった瞬間に尿が漏れてしまう状態です。出産や加齢、閉経に伴う女性ホルモンの低下によって、膀胱と尿道を支える「骨盤底筋群」が緩むことや、尿道を締める力が弱まる(尿道括約筋の機能低下)ことが原因です。
② 切迫性尿失禁・過活動膀胱
急に激しい尿意が起こり(尿意切迫感)、トイレまで我慢できずに漏れてしまう状態です。本来、尿が十分に溜まるまで緩んでいるべき膀胱の筋肉(排尿筋)が、自分の意思に反して勝手に収縮してしまうことが原因です。この状態は「過活動膀胱(OAB)」の症状の一部としても知られており、脳と膀胱を結ぶ神経のトラブルや、骨盤底の緩み、加齢などが背景にあります。
当院の治療について
腹圧性尿失禁の治療
お薬を使わない治療
【減量】
体重が増えるとお腹の圧力(腹圧)が慢性的に高くなり、骨盤底や尿道を支える構造に負担がかかります。その結果、咳や運動などで腹圧がかかったときに尿が漏れやすくなります。肥満は腹圧性尿失禁のリスク因子とされており、減量は推奨度の高い治療とされています。
体格の指標として用いられるBMI(Body Mass Index)は
- BMI18.5〜25:標準体重
- BMI25以上:肥満
とされています。BMI25以上では尿漏れのリスクが高くなることが知られており、減量はガイドラインでも推奨グレードAと高い位置付けとなっています。研究では、体重を5〜10%程度減らすだけでも尿失禁の頻度が改善することが報告されています。Subak LL, et al. N Engl J Med. 2009
Wing RR, et al. J Urol. 2010
【骨盤底筋トレーニング】
骨盤底筋トレーニングは骨盤底の筋肉を鍛えることで、尿道の支持組織を支える力を強化します。
お薬による治療
腹圧性尿失禁の薬物療法にはβ2受容体刺激薬が保険適応で使用できます。これは気管支拡張作用から喘息にも使用されるお薬です。排尿に関しては、膀胱平滑筋の拡張と尿道括約筋の収縮作用があり、おしっこを溜めやすく、漏れにくくする作用があります。ただし、副作用に動悸や手の震えなどの副作用を生じることもあり、併用して骨盤底筋トレーニングを施行するか、重度の場合は手術を提案することもあります。
切迫性尿失禁・過活動膀胱の治療
薬を使わない治療
【膀胱訓練】
尿意を感じたときにすぐにトイレに駆け込むのではなく、まずは「あと5分だけ」、徐々に、10分、15分と我慢する時間を延ばしていきます。最終的には2〜3時間の間隔を目指します。
ただし、膀胱炎などがある場合は症状を悪化させる恐れがありますので、必ず受診の上、医師からの指導を受けて行う必要があります。
【骨盤底筋トレーニング】
腹圧性尿失禁と同様に尿道を締める力を養うために、骨盤底筋を鍛えるのも有効です。
お薬による治療
【抗コリン薬】
古くから使われている実績の多いお薬です。膀胱を収縮させるアセチルコリンの働きをブロックし、膀胱の勝手な収縮を抑制します。
副作用として口の渇き便秘があります。また、眼圧の上昇作用があり、緑内障のある方には使用しません。
【β3作動薬】
比較的新しいタイプの薬で、第一選択として使われることもあります。主に膀胱平滑筋に作用し、尿を溜められるよう容積を増やす働きがあります。抗コリン薬で生じる口の渇きや便秘の副作用が少なく、使いやすいのが特徴です。
